鹿の王
上橋菜穂子氏の「鹿の王」を読みました。
とにかく面白い!
この方の小説は、争いの矛盾をしっかりと描いているのがすばらしいといつも思います。
今回は黒狼熱という感染症を中心に話が進んでいきます。
トナカイを放牧する民、汗血馬を思わせる馬「火馬」と暮らす民、飛鹿とよばれる群れで生きる鹿と暮らす民、様々な技術に秀でた民・・・・
多民族がそれぞれの思惑で動いていきます。
病にかかる人とかからぬ人の違いは、同じ病にかかっても治る人と治らぬ人がいるのはなぜか。
この問いが物語の底に、静かに流れています。
医師とその助手が薬を作るために、地衣類や植物を探してまわるシーンがでてきます。
サイクルの早いウィルスはすぐに新種がでてくることがありますが、ふと新種の病でもなんらかの対応策はあるのではないかと思いました。
この地球にともに存在する生命である限り、未知であるということは「見つかっていない」ということで、海底深くや森の葉、虫などに病に拮抗する成分があるのではないかと思います。
主人公は黒狼熱にかかり、感覚が鋭敏になります。これは寄生虫が宿主の行動を操ることに似ています。
作中にエリシア・クロロティカがモデルのウミウシもでてきます。
読んだ後、ブラック・ジャックの「ちぢむ!!」の最後の言葉「医者はなんのためにあるんだ」を思いだしました。