香君

ファンタジー,人生の教養

上橋菜穂子著「香君」

単調な生態系の危うさがでている。さらに天敵のいない外来種の脅威やわかりやすさ、手軽さに依存した国家の脆さが美しい文章で描き出されている。
一気に読んだ。
彼女はファンタジーでありながら、戦争をきちんと描く。今回は戦争はないものの、立場の違うものの価値観の違い、大国として蝗害による災害時の動きの遅さなどが書かれていた。
自然に対する描写がとても素晴らしく、架空の場所でありながら、文字の間から山々の稜線や気温、草木の香り、森を渡る風の音が聞こえてきた。
香りで万象を知る「香君」は賢い女性だった。
異郷の地で何が起こっているのか気になるが、知らないほうがいいのかもしれない。

この星の生態系は、絶妙なバランスで成り立っているからこそ逞しいと改めて思った。